創業200年の老舗が100%里美産原料で作る、こだわりの日本酒「日乃出鶴」合資会社 井坂酒造店

茨城県 常陸太田市 里美地区(旧里美村)の酒蔵 井坂酒造店

常陸太田市里美地区は、かつては茨城県久慈郡里美村とよばれた、周囲を山に囲まれた自然豊かな土地だ。

今回お話しをしてくださったのは、専務の井坂統幸(いさか むねゆき)さん。

井坂酒造店は一昨年の2018年に創業200周年を迎えられた由緒ある、老舗の造り酒屋。昔ながらの造り方にこだわり、「飲んでうまい酒」を目指し、お酒作りをされている。

今回は、新型ウイルス感染症に負けずに頑張るお店を取材させて欲しいというIBARAKI STAY-LEの趣旨にご賛同いただき、一番に名乗りを挙げていただいた。じっくりとお話を伺った。

(取材日は2020年5月28日。感染予防対策を考慮の上で取材を行いました。)

地元 里美の方々に支えられて200年

−会社とご自身の自己紹介をお願いします。

当社は合資会社井坂酒造店と言います。で、自分は専務という形で、井坂統幸(いさか むねゆき)と言います。
井坂酒造店は、1818年、文政元年に井坂家の初代が創業した日本酒を作る酒蔵です。文政と言われてもちょっとピンと来ないかもしれませんけど(笑)

現在使っている、酒造りのための蔵は明治32年に作られたもので、今でも毎年所々修繕をしながら、使い続けています。

また、おかげさまで、地元地域の方々に支えられながら、一昨年の2018年に創業200周年を迎えることができました。今も変わらず昔ながらの造り方で、日本酒と、1種類だけですが焼酎も作っています。

新型ウイルス感染症の影響は大きいが、対策をしつつしっかりと体勢を整備

新型ウイルス感染症の自粛要請の影響は大きい

−新型ウイルス感染症の影響はありましたか

飲食店やホテル、旅館などが休業・自粛要請に対応して、営業時間の短縮や休業をされたんですね。そういった事業所に商品のお酒を卸し販売をする比率が多かったんです。そのため、お店さんからの注文が激減してしまって、大きな打撃を受けているといった状況です。

当然のことながら、うちの会社だけでなく、茨城県内はもちろん、全国の酒蔵さんも大きく売り上げを落として、かなり厳しい状況になっていますね。

−店舗さん以外の小売や直接酒蔵に来られるお客様への影響は?

地元の方で、直接酒蔵に買いに来てくださる方も自粛要請が出る前は多かったのですが、この感染症のことでお客様自身も自粛しなければならない状況になってしまい、お客様も蔵に来ていただくことに気を使っていただいたようで、蔵元での直接販売も落ち込んでしまいました。

−家飲み需要でお酒は少し活況な面もあったという話も聞かれましたが、いかがでしたか

お客さんはそれぞれの自宅、家での自粛ということになったので、缶入りのお酒、ビールや発泡酒などの自宅飲み用の物は景気が良かった様です。
でも日本酒のような高価なお酒にはどうしても手が出にくかったようなイメージですね、日本酒業界にはとても厳しい状況だったと思います。

そんな中でも、応援というような感じで、特に友達や知り合いの方からは「買いたいんだけど、買いに行けないから送って欲しい」ということで、問い合わせをいただきました。
特に4月から5月のゴールデンウィークにかけて、自粛でおうちで過ごす時間を「ゆっくりとお酒を飲みながらのんびりしたい」ということで電話やネットからの注文がありましたね。

蔵元の直販では感染予防対策も

−緊急事態宣言が解かれた今、感染対策として取り組んでいることは?

お客様も少し気持ちがゆるんで、外に出ようかなとか、蔵元にお酒を買いに行こうかなと思ってくださるのかなと思うんです。
せっかく蔵元に来ていただくなら、気兼ねなく、あまり気を使わずに来ていただきたいと思うんですね。

なので、蔵元へお越しのお客様のために、消毒用のアルコールジェルを用意していますし、マスクも持っていない方にはお配りできるような体勢を整えています。

−自粛期間中にウェブまわりの対策をされてましたよね

そうですね、自粛期間中、私自身も時間があったので、できることをやろうと思い、ウェブサイトなどの整備をしていました。

特に、自宅で過ごす時間が増えて、ネットショッピングが好調だということを知って、当社の直販のオンラインショップを開設しました。

−ちなみにオンラインショップの売れ行きはどうですか?

今のところは、開設してから2週間くらいなので、まだこれからかなという感じです。(笑)

井坂酒造店  Online Shop

変えないこと、変えていくこと。

200年という歴史の中でも、新型ウイルス感染症のような世界中を巻き込む変化は何度となくあっただろう。

その歴史を受け継いでいく中で、お酒造りに対して、どんな思いを持って向き合っているのか。今一番の自信作をもとに聞いてみました。

オール里美で造った日本酒「日乃出鶴 美山錦 純米吟醸」

−今イチオシのお酒を教えてください!

「日乃出鶴 美山錦 純米吟醸」です。
(「日乃出鶴(ひのでつる)」は井坂酒造店さんのお酒の銘。)

−オススメのポイントは?

特にこだわったのは、この「日乃出鶴 美山錦 純米吟醸」は、全ての材料を地元 里美地区で生産された酒米で造っているんです。

実を言うと、一昨年2018年の創業200周年を記念して造ったお酒のひとつで、私がお酒の設計から、お酒自体の造り、ラベルのデザイン、初めて全て自分でプロデュースして作り上げた逸品なんです。
地元のお米で、地元の人に酒造りを手伝っていただいて。そうして出来上がったオール里美の名にふさわしいお酒です。

−おぉ、すごい!井坂さんの渾身のお酒と言うことですね。どんなお味なんでしょうか?気になります!

そうですね、味わいとしては、ほんのりと甘い感触もありながら、すっきりとした後味になるように考えました。
というのも、これまでの日乃出鶴のイメージとして、辛口ですっきりとした後味、という所をきちんと踏襲した上で、つくりたかったんです。

ですので、この「日乃出鶴 美山錦 純米吟醸」でも、辛口ですっきりとした感じを残しながら、誰でも飲みやすくなるように仕上げました。

−なるほど、お酒を醸して造っていく工程の中でこだわったポイントはありますか?

やはり、日乃出鶴、井坂酒造店のお酒、として出したいという思いが強かったんです。ですので、今まで通り、昔ながらの手作りの製法で造りました。

とはいえ、私の初のプロデュース作品として、全てがすべて、これまでと一緒というのでは面白くないなと思ったんです。なので、自分なりに勉強をしたり、先生方に教わりながら、自分なりに変化をつけて造ってみたんです。
最近では甘めのお酒が流行りだと思うんです。なので、甘めになるように設計したり、麹の作り方を変えてみたり。普段、私の蔵ではさほどお米を削らないでお酒を作るんですが、いつもよりはお米をしっかり削って、精米歩合を変えたりと、様々な面で試行錯誤をしながら工夫を凝らしています。

−初のプロデュース作品ですか。造ってみてどうでしたか?

お酒造りは、一般的に毎年同じような味わいになるように作るんです。それがお酒作りの常識という感じなんですよ。

この「日乃出鶴 美山錦 純米吟醸」に関しては、もちろん毎年自分なりにベストな出来に仕上げていますが、今年は昨年よりも良いものにする。ということを常に考えて作っているお酒です。

ちなみにラベルを金の箔にしたのは、創業200年の記念酒だからなんですが。自分の想いとして「毎年新しいお酒が誕生するということ、すなわちめでたいこと」ということから、おめでたい色の金にしたという裏設定もあったりします(笑)

−これからもずっと進化を続けて変化していくお酒ってことですね?

そうですね。時代によって変化していく、お客様の好みの傾向に少しでも寄り添えるように。
毎年を前年の自分とお酒を超えられるように、今後も技術を磨き続けて「成長するお酒」として育てていきたい商品です。

ですので、毎年毎年変わっていく味わいを、変化していくところを楽しみながら味わっていただけたらいいかなと思います。

−ちなみにこの「美山錦 純米吟醸」はどちらで購入できますか?

常陸太田市を中心に販売しております。里美の直売所や、道の駅ひたちおおた などで販売しています。

また、当社の蔵元での直販も可能です。

一部近隣の飲食店さんにも取り扱っていただいてますので、見かけたら是非ご賞味ください。

−ちなみにオンラインショップでは購入できますか?

もちろんです。ご注文いただければ、すぐにご用意して発送いたします。是非ご注文ください。お待ちしております。

井坂酒造店  Online Shop

変化を恐れず、守り、進化しながら日本酒作り、地酒作り。

創業200年を機に前段で紹介していただいた「日乃出鶴 美山錦 純米吟醸」だけでなく、井坂酒造店で造る全てのお酒を地元里美地区で生産された酒米に切り替えた。
インタビュー後の話では、過去に同様の挑戦した時があったようだが、その際は収穫量や造りなどの面で不調に終わり断念したこともあったそうだ。

過去の失敗に恐れず、挑戦される井坂さんの思いを聞いた。

大きな時代の変化の中でも、自分にできることを一生懸命に。

−この先、やってみたいこととか将来のこととか、考えていますか

将来の展望とか、5年後、10年後って考えたりしますけど、でも正直それって無意味なんじゃないかな。って最近思うようになったんです。

特に今回の新型ウイルス感染症については、世界中の誰もが予想なんかできなかったはずじゃないですか。まさか、今年こんなことが今あるなんてわからなかったですよね。だから、あんまり考えても仕方ないのかなって。

こういったことがったからこそ、大きく時代が変化している中で、自分ができることってなんなのだろうか。と考えるようになりましたね。

−実際に何か取り組んでいることはありますか

前職は東京でシステムエンジニアをしていました。ですが、元々地元の里美のことは好きだったので、地元に帰郷、Uターンしてきました。

幼い頃から家族以外の地元の方々によく世話になりながら育って、東京へ出てからも時々帰省すると、近所のおばちゃんが覚えてくれていて。
ある時、自分もある程度、社会人として成長したなと思って。今度は自分が地元で地酒を造り続けることで、地元の方々に恩返しできたらいいなと思ったんです。

結果的に地元をPRしていく手段として、地元で生産された原材料で、商品であるお酒を造っていくことを昨年、2019年から始めたんです。

 

地元でできた原材料で、お酒造りをしていくこと。これを通して地元をPRしていくこと。これらは5年後、10年後でも変わらないことだと思うんです。
なので、このやり始めたことを、お酒作りに協力してくれる地元の方々や農家さんと向き合いながら、自分なりに一生懸命やり続けていこうと考えています。

飾られていた商号。右下「小里村」とあることから1956年以前のものであろう。

200余年もの伝統の中で変化に屈しない強さを感じた

創業○百年と聞くと、やよもすると、どこか敷居が高く、取っつきにくいような先入観があるかもしれない。

井坂酒造店さんも、門構えや蔵の雰囲気はいかにも日本の昔ながらのつくりといった感じだ。

でもそこで待っていたのは、朗らかで優しい井坂さんだった。

 

インタビュー中も一点を見つめ、しっかりとした口調で淡々とした話ぶりから、長い歴史を背にしながらも、世の中の変化に合わせて変えるべき所、はたまた、しっかりと頑なに守り通すべきところを見極めているのだと思った。そこには何か周囲の環境の変化に屈せずに、お酒造りに邁進していく計り知れない強さがあるのかもしれない。

店舗・アクセス

合資会社井坂酒造店
住所:茨城県常陸太田市小中町184
TEL:0294-82-2006
WEB:https://www.isakasyuzou.co.jp/
ECサイト:井坂酒造店Online Shop

井坂酒造店公式サイト

井坂さんの渾身の逸品を買って応援!

 

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