常陸牛・花園牛を仔牛から一貫生産する和牛専門牧場 北茨城市 華川牧場

黒毛和牛専門の繁殖肥育牧場 北茨城市 華川牧場

ブランド牛と言えば何を思い浮かべるでしょうか。松坂牛、神戸牛、米沢牛。日本各地に様々なブランド牛があり、今や群雄割拠と言った様相。

茨城県の和牛ブランドと言えば「常陸牛」を思い浮かべる方も多いはず。常陸牛は茨城県の政策や、その味の良さから近年とても有名になり、県内を問わず有名なレストランなどでも食すことができる様になってきました。
また茨城の和牛ブランドとして、知る人ぞ知る「花園牛」と言うブランドがあります。

花園牛、常陸牛を生産する牧場に今回は取材を敢行しました。

北茨城市の山あいの華川町にある 株式会社華川牧場 代表取締役 小野 真太郎(おのしんたろう)さんにお話を伺いました。

養豚から始まった牧場。現在は黒毛和牛専門の牧場に。

ー自己紹介をお願いします。

株式会社華川牧場(はなかわぼくじょう)代表取締役の小野 真太郎(おの しんたろう)です。
畜産をしておりまして、畜種は黒毛和牛を専門に扱っています。黒毛和牛の牛肉を生産して販売しています。生産した牛肉は、花園牛もしくは常陸牛として出荷しています。

ー牧場はいつ頃始められたんですか

牧場自体は私の父が昭和52年(1977年)に立ち上げたことから始まりました。父が初代で、私が2代目を現在引き継いでいると言う状況です。

私は生まれも育ちもこの北茨城市華川町でして、大学卒業後、3〜4年ほど修行をして、今から16年前に地元に帰ってきました。それからしばらくは父が代表でしたが、6年前に私が代表を引継ぎました。

ー牧場を始められたきっかけは?

元々、父が養豚場で働いていて、そこから独立して始まったのがこの華川牧場の始まりです。当時は豚を飼っていました。その後、豚に加えて牛もと言うことになって、豚と牛とをやっていました。牛を始めようと言うことになった時に、法人として立ち上げて始まったのが昭和52年です。

元は豚と牛とやってましたが、今では牛専門でやっています。

ーなぜ和牛専門の牧場に転換しようと考えたのでしょうか。

豚の価格が安定しなかったと言うことと、当時輸入自由化が始まると言うことで、市場価格が下がってしまったりと言うことがあったんです。その様な流れがあって、大きい頭数を抱えなければ経営が安定しないと言う世界になってきてしまったんです。そう言うことであれば、生き残っていく為に牛に転換する方が良いのではないかと言うことで、牛専門に転換したと聞いています。

牛を始めた当初は100頭規模からの始まって。徐々に増えていって今では800頭を飼育しています。

ー牧場が2カ所に分かれていますよね。その違いは何かあるのでしょうか。

元々豚を飼っていたところと、丘の上と2つに分かれています。それぞれどちらも飼っているのは黒毛和牛で同じ種類。

それぞれやっている仕事の内容、カテゴリーが違うんです。元の豚を飼っていた所では、現在はお母さん牛を置いて、子供を産んでもらう。繁殖のための牛舎があります。そこで生まれた仔牛を育ててお肉にするために育てる牛舎があるのが、丘の上の牧場になります。

華川牧場ではお肉になるための仔牛の生産から、大きく育てるところまでを一貫して行っています。全頭数と言うわけではないですが、およそ1/3が牧場での一貫生産。あとの2/3は仔牛を買ってきて育てています。

市場に翻弄されたからこそ、確固たる経営基盤作りを考えた

ー新型ウイルス感染症の拡大による影響はありましたか。

販売の面で影響を受けました。買ってきた仔牛の値段と、売るときの値段が全く変わらないと言う状況になってしまいました。なので、大きく育てる為にかかった費用が全く取れないと言う状況です。中には、買ってきたときの値段よりも安い値段になってしまって、マイナスでも右から左で流している様な状況が、3月〜6月くらいまで続きました。

ー値段が下がってしまう状況の中で、出荷せずに飼い続けると言うことはできないのでしょうか。

飼養期間が30ヶ月で普段出荷するのですが、30ヶ月を超えてくるとどうしても牛が死んでしまうリスクの方が高くなってきてしまうんです。牛は動物ですのでいつそうなるかはわからない。ですので、なるべくならば出荷の時期を引っ張りたくないと言うところです。

良くあることなんですが、明日出荷の予定だったのにその牛が死んでしまった、と言うことも中にはあるんです。あと1日生きていてもらえれば、お肉になってもらえたのにと…。

ー牛が死んでしまったら、そのあとはどうなってしまうんでしょうか。

死んでしまった牛はお肉になることはないんです。死んでしまうと牛は産業廃棄物になってしまうんです。

飼養期間が30ヶ月を超えてそう言ったリスクが高まるのであれば、少し安くても出荷してしまった方がいいだろうと言う考えにもなりますよね。

逆に他の牧場では、少し飼養期間を伸ばしても、きちんと管理できるからと言う理由で問題ないと考える方もいるんです。それぞれの農家さんごとに色々考え方はあります。ですが、うちでは今まで通り普通に出荷する様にしていました。

ーなるほど、そう言った状況の中で対策や対応として考えたこと、取り組まれたことはありますか。

先ほど言った通り、自分たちの牧場で母牛に仔牛を産んでもらってお肉になるまで育てること、また牛達の餌になる牧草を少しでも自分たちで生産すること。これらをすることによって、牛を育てるための経費を少しでも抑えることができる様にと考えています。

販売の価格と言うのは市場によって左右されてしまうので、自分たちではどうにも操作することはできない。なので、販売するまでの生産にかかる費用をいかに抑えて生産できるかがカギになります。
市場の価格に左右されて翻弄される状況を、少しでも早く脱しないといけないなと。そう言ったことは昔から考えていたんですが、もっと速いスピードでやっていかなければならないなと思いましたね。

今の問題点は、高い値段の時に買ってきた牛を、買ったときの値段と同等かそれ以下で売らなければいけないと言うこと。80万円、90万円で買ってきた牛を飼養して120万とか130万とかで売ろうと考えていたのが、現実は80万円、70万円で売らなければいけない。そう言ったことがこのコロナでの大きな影響を受けたことです。

牧場で一貫して仔牛から生産できれば、仔牛を市場で買ってくるよりも安定した価格で生産できる様になります。市場での価格変動にも柔軟に対応できる様になるかなと。

仔牛を1頭でも多く牧場で生産して、さらに餌になる牧草も少しでも自分たちで生産できれば、全体的なコストを抑えていくことができると考えています。これらはもうすでに始めています。いずれはこういったスタイルにしたいと考えていたんですが、このコロナで一気に前倒しにしなければと言う思いが強くなりました。今まで以上にとにかく早くやっていかなきゃと。

仔牛が生まれてお肉になるまで 和牛にかける思いとは

ー仔牛が生まれてお肉になるまで、どんな工程がありますか

通常和牛は生まれてから大体30ヶ月程の期間をかけてお肉になるのが大半です。うちの場合は生まれた仔牛はお肉にする為に出荷するまで30ヶ月で出荷します。うちで生まれる仔牛意外に、途中で買ってくる仔牛もいます。買ってくる仔牛は大体9〜10ヶ月くらいの仔牛。その仔牛たちはそこから約20ヶ月くらいかけて育てて、最後お肉にして出すと言うことになります。

ー牛を育てる為にすることは?

基本は餌をあげるだけなんです。餌をあげるだけなんですが、牛が生まれてから何ヶ月か、その月齢によって餌のあげ方を変えていきます。

生まれてから15ヶ月くらいまでは、とにかく胃袋を大きくするということに力を入れます。そのあと、後半の15ヶ月で大きくなったお腹にどんどん餌を食べさせて、体を大きく作っていく。これが一般的な和牛の飼い方です。

ー母牛は何頭くらい飼っていますか

今、母牛は150頭ほどいます。現状では1年に117頭くらいの仔牛が生まれています。

ー母牛に仔牛を産んでもらう繁殖をする上で、気を遣うこと気をつけていることは

生まれたばかりの仔牛って本当に弱いんです。朝見に行ってちょっと調子悪いかなと思うと、お昼死んでしまうってこともあります。

これが本当のことかどうかは断言できませんが、どうしても和牛は肉質重視で品種改良されてきたので、生物的にはとても弱い動物になってしまっているんだと思います。
ですので、生まれてきた仔牛たちが、どうしたら死なない様に最後のお肉になるところまでいってもらうか、と言うのが難しいところ。

お母さん牛にはできる限り年に一回仔牛を産んでもらって、その仔牛を殺さない様にすると言うことですよね。

ー殺してしまう、とはどう言うことでしょうか

人間のエゴですよね。それによって命を操作しているわけですから。せめて自分たちの目的である肉牛になってもらうと言う目的を達成したいと言う思いがあります。

先天的な病気で死んでしまう牛もいますが、多くの原因は人間の管理ミスがあって死んでしまうことが多いので、あえて我々は殺してしまう、と言う言葉を使っています。

その様なことのないように、細心の注意を払って、病気の対策をして、また生まれた仔牛にも病気が感染らないように予防・対策をして、しっかりと最後までお肉になってもらうと言うこと。そういったところは特に心がけてやっています。

ーやはり手塩にかけた牛達は可愛いと思いますか

生まれたばかりの仔牛は可愛いですが、私たちにとっては牛は商品ですし、ペットの様な感覚というか、可愛いってだけではできないですよね。

でも、愛情を持って接する様にしないといけないとは思います。牛は動物で喋ることができないですよね。牛が人に対して何か訴えたいという時に、そういう気持ちで見ないと分からないんです。牛を毎日見て「今日はちょっと目の開け方が弱いかな」とか「辛そうな顔してるかな」とか。そう言うのは可愛いなという様な気持ちで見ていれば気づくことができるんです。
いつもと違うちょっとした表情で発信してくるものを、人間がいかに掴み取れるか。それに対していかに早めに対処できるか。その為には良く牛を見ていないと、気づくことが出来ないですよね。

花園牛・常陸牛。美味しさの秘訣は脂にあり。

ー華川牧場の目指す、和牛とはどんなお肉でしょうか。

やはり一番味に差がつくのは、脂の部分。店頭でいろんなお肉が並んでいても見た目だけでは、全く差がないですよね。和牛は霜降りとかサシと言われる脂が入るのが特徴のお肉です。その脂が脂っぽすぎてくどいお肉では食べられないですよね。ですので、食べやすくて、それでいて風味の良いお肉になる様、心がけて育てています。

実際にお客様とかお店から「食べやすいお肉ですね」とか「脂の味がすごくいい」といった評価も多数いただいています。

ー花園牛を生産されていると言うことですが、花園牛はどんな牛なんでしょうか。

花園牛は茨城県の北部にある、北茨城市、高萩市、日立市で生産される黒毛和牛につけられる和牛のブランドです。

花園牛を生産しているのはこの3市の農家さんが何軒もありますが、その中で生産量としては華川牧場がトップになってます。

ーこれまでの品評会での受賞歴などはありますか

去年2019年と、一昨年2018年の花園牛の年に一回の品評会でどちらも優勝、最優秀賞をいただきました。

常陸牛の大会でも、優秀賞、優良賞を入賞しています。常陸牛は茨城県全域になるので、すごくレベルの高い方がたくさんいまして。いいところまできてるのでこれからもっと上を狙っていきたいですし、トップをとるのも可能なのかなと感じてます。

ー花園牛や常陸牛になる牛にはどんな資格が必要なのでしょうか

花園牛や常陸牛になる為には、肉質の格付けの基準をクリアしないといけないんです。花園牛も常陸牛も格付けがA4,A5でないとなれません。そのほかにもブランドごとに細かいルールがあります。

格付けは一頭の牛からお肉がどれだけ取れるかと言う基準の歩留まり等級ABCと、お肉の質を表す肉質等級5〜1があります。C1が最低でA5が最上位。その15段階のうち上位2段階だけが花園牛や常陸牛になれるんです。ですので、細かい厳しい基準の中で、認定されていると言うことを知って頂けたらと思います。

ー全国にはいろんなブランド牛がありますが、茨城の和牛は比べると…?

全国平均からすると、割と茨城の和牛は上位にあると思います。例えば肉付きの良さとか、サシの入り方とか。結構そういった面では茨城の和牛はトップ圏内に入るんです。
茨城の和牛はかなり質が良いと言うのは認知されていると思います。成績としては本当に全国トップレベルのお肉ですね。

ー牛に与えるえさ、飼料に対するこだわりはありますか。

うちとしては、できるだけ地元の飼料を使うと言うことに取り組んでいます。地元の農家さんと連携しながら牛を育てていくスタイルでやっています。
ただ肉を生産するだけではなく、地元と連携して肉を作り上げていく。耕畜(こうちく)連携っていいますが、そういったことを目指しています。

実際に、今、地元の農家さんにお願いして稲を牛のために育ててもらって、それを牛に与える。そして牧場でできた堆肥を農家さんに提供して、畑や田んぼに還元して返していく。お互いに良い循環、連携ができる様なスタイル、地域循環のカタチを目指して取り組んでいます。

ーお肉の味へのこだわり、想いは?

やはり食べて美味しいといってもらえるお肉を生産すること。どんどん箸が進む様な、食べた時に脂っぽくなく、くどくないお肉を目指して生産しています。
脂身と赤身の部分のバランスの良い、和牛の美味しさが楽しめる様なお肉ですね。

地元で育てた牛肉を地元・北茨城の皆さんにもっと食べてもらいたい

ーでは最後に、小野さんの今後の夢や目標を教えてください。

今目指しているのは、仔牛を外部から2/3は買ってきているので、それを全て牧場内で一貫して仔牛からお肉になるまでを全部やります、というスタイルにもっていくこと。これがまず目指しているスタイルなんです。

またさらに、牧場一貫生産と言うことを売りにしながら、自分で地域の方々にお肉を販売できる様な場所を将来的には持てるようになれれば良いなと考えています。卸販売は難しい面もあると思いますが、自分で作ったお肉を自分の手で提供したいと言う思いは、地元に帰ってきた時からの思い、夢なんです。

和牛はどうしても安いものではないので、そこをどうにかうまく考えていって、手ごろな価格で地元の皆さんに気軽に食べてもらえる様なお店が作れたらなと考えています。

店舗・アクセス

※華川牧場では牛の健康を守るため、一般の方の見学は受け付けておりません。
そのためアクセス情報は一部省略して掲載いたします。

株式会社華川牧場
住所:茨城県北茨城市華川町

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