地域に支えられながら24年。こだわりのドイツ式製法の地ビール。大子町 大子ブルワリー

茨城県大子町の地ビール醸造所 大子ブルワリー

地ビールというと、地域ごとに特色のある変わった味のビール。といったイメージがあるかもしれません。

しかし、大子ブルワリーのビールは伝統的なドイツの製法を踏襲した、いわば昔ながらのビールを作っている。

地ビールの工場に併設のレストランでは、もちろんそのビールを味わうこともでき、ビールに合わせたソーセージやハンバーグなどを食べることもできる。

今回IBARAKI STAY-LEの新型ウイルスに負けないお店特集の趣旨にご賛同いただいて、取材を敢行した。

ひょんなことから始まった、大子の地ビール造り

−会社とご自身の自己紹介をお願いします。

はい、茨城県大子町で地元の水を使って地ビールの製造販売をしております。法人名は大子森林物産株式会社といいます。代表をさせていただいてます、綿引賢治(わたひき けんじ)です。

レストランもやってまして、こちらの名前は大子ブルワリーと言います。

元々、先代の社長、私の父が始めたんです。私は東京で建築関係の全然畑違いな仕事をしてまして。お盆やお正月に帰ってきたときに、父親がなんか作ってるなあと思ってたんです。
父は自動車部品の工場をやってたんで、第二工場でも作ってんのかなーって思ってたんです。で、年明けて「手伝って欲しい」って言われて。
よくよく話を聞いたらビール作りがしたいってことだったんですよ。

相談もなくて、何も聞いてなかったんで、びっくりしちゃったんですけど(笑)でも、どうせやるなら、しっかりしたものを作りたいと思ってやり始めましたね。

その結果、今年で創業24年になりました。

−ビール造りを始められたきっかけは何だったんですか?

先代の社長の父が、仕事でヨーロッパに行ったんです。お酒好きなので、ヨーロッパ中のお酒を色々と飲み比べて、ドイツの伝統的なビールが美味しいってことに気がついて。感動したんだそうです。そこからドイツビールを作りたいと思ったということが始まりですね。

特にドイツのビールは、副産物を入れない、本格派。麦、水、酵母、ホップの4つの材料でビールを醸す。これだけで作るのがドイツのビールなんです。ドイツでは純粋令といって法律があるくらい。
他の国では、フルーツを入れたり、ハーブを入れたり。色々な副産物を入れたりするのが盛んなんですが、ドイツでは一切やらない。そういったしきたりみたいなものに惚れ込んでしまったんですよ。

そういったことから、もしやるなら、ドイツのこだわり抜いたビールをやりたい。ってことで、始まったんですよ。

−ビールの作り方はどこで習ったんでしょうか

今年で創業24年になりますけど、オープン当初、ドイツの技術者に大子にきてもらって、住んでもらって。7年間教わっていたんです。

で、そこで習ったことを受け継ぎながら、ずっとドイツ式のビールの製法を守ってビールを作っています。最近では、私もビール作りに携わったりしてるんですよ。

新型ウイルス感染症の影響は?

自粛要請期間中も地元大子の方々のために

−自粛要請の期間中の営業はされてたんですか?

休まず営業はしてました。午前中11時に開けて、6時までですね。普段は予約があるときだけは夜9時までやるんですが、期間中は夕方の6時で閉めるようにしてました。

やっぱり、お客さんもほとんどきていただけない状況で、お店休もうかなとも思ったんです。でも、開けているとお客さんって来てくださるんですよね。
どこもやってないから食べるとこがないとかって理由でお客さんが来て「開けててくれて助かったよ」って言われたりしましたね。

ブルワリーのレストランでは夕方までですけど、食事もできるし、もちろんビールなんかも飲んでいただけますしね、

−売り上げの面ではどうでしたか。

はっきりいって本当に苦戦しましたね。飲食店さんへ納入する分が、お店さんも自粛でお店が開けられないということで、ビールの注文は激減してしまいました。

そういった中で、うちの場合は、レストランがあったんで、どこも取り組んでいたと思うんですが、テイクアウトに力を入れようと。何もやらないよりは少しでも売り上げが上がれば、気持ちも落ち着くかなと思いまして。
テイクアウトやってみると、思った以上の反響があって、ピザとか、ハンバーグのお弁当とか結構買っていってくれるんですよね。外食ができないような雰囲気ですから、少しでも外食の雰囲気を味わえれば、という感じでお客さんも来てくださってたんですよ。

なので、テイクアウトは正直やって良かったな、と思ってますね。

−この自粛期間を経験して何か感じることはありますか?

そうですね。東日本大震災のときと同じような感じですけど、どん底に突き落とされて。でも地震は上を向いて登るだけでしたけど、今回の場合はちょっと違うなと。いつまでこのどん底の状態が続くのか見当もつかないので、厳しいことは間違い無いですよね。

なので、新しい商品とか、次の手立てを考えながら、今できる準備を進めながら、上手く対応していきたいなと思いますね。

−自粛要請の解除で変わったことはありましたか?

やっと、納入先の飲食店さんもお店を開けられるってことで、嬉しいことにわずかですが、ビールの注文が入ってきてますね。
やっぱり飲食店さんもメニューに載ってると商品がないわけにはいかないですからね。本当にありがたいなと思いましたね。

全国的にも希少?ドイツにこだわったビールを大子で。

写真中央がピルスナー。

−オススメのビールを教えてください。

売り上げ的にも一番人気なのはピルスナーというビールです。

ピルスナーというビールはいわゆる日本人の好みのタイプのビールで割と薄味というか、でもしっかりと香りもコクもあるようなタイプのビールで、喉越しを楽しむような感じですね。

ある東京のお店のオーナーさんがいうには、本当にドイツの製法を守って作られている本格的なピルスナーのビールって、意外と作っているところがないんだそうです。

他の地ビールメーカーだと色々個性のある味を追求しているところが多いので…。逆を言えばうちは、大手メーカーっぽいと言えばそうかもしれませんけど、うちは麦を100%使ってるんで、味わい深くて、香りもしっかりとしているんですよ。

一般的にビールっていうのは、麦を使う比率を減らすほど、味わいが薄くなっていくんですよね。
だから、例えば発泡酒みたいなものだと、麦の比率が少ないのでキンキンに冷やして喉越しで楽しむような感じになるんですよね。発泡酒って緩くなってくると味がぼやけてくるじゃないですか。

それに対して地ビールは麦100%で作っているからこそ、すこし温度が上がってきても、しっかりとした味があって、むしろ香りが立ってきたり、最後まで飽きずにちゃんと美味しく飲めるんですよ。そういったところが地ビールのいいところだと思いますね。

−そのオススメのビールはどちらで購入できますか?

大子町周辺で購入できます。袋田の滝を中心に、ですね。

あとは、県内でも日立市や、水戸市、つくば市などに置いてもらってますね。具体的にどこで飲めるのかっていうのは、大子までわざわざきてもらうのもいいですが、遠いかなと思うので、お電話とかお問い合わせいただければ、近くのお店をご紹介するようにはさせてもらってます。

あとはうちのホームページからも通販で買えますので、良かったら見ていただけたら嬉しいですね。

−そういったお店に置いてある銘柄は何がありますか?

大体はピルスナーやヴァイツェンなどが主に置いてますね。(ヴァイツェン;大麦の他に小麦も使った、俗に白ビールと言われる、軽やかな味わいのビール)

−ビールへのこだわりを教えていただけますか?

そうですね、やっぱり、冒頭でも言いましたように、ドイツ式製法にこだわっているというところですね。材料も、作り方も。あと、作っている工場の道具や機材もドイツの物を使っています。最初に作り方を教わったのもドイツ人技術者だったってことで。やっぱりドイツ式製法の本格派のビール作りにこだわっていますね。

仕込みに使う水は、地元の水を使っています。山からの水なんで、水も本当に美味しいと思います。水もビール造りに欠かせない物ですし、ビールにも合っているのかなと思いますね。

うちの場合は頑なにドイツ式のビールしか作らないんで、ビール好きのマニアの方にはむしろそれがいいって方も多いんですよ。なので、材料の麦、酵母、ホップも全てドイツから輸入しています。

−地元ならではのビール造りは考えられたりしないんですか?

今のところは積極的には考えたりしていないですが、今後地元のお米を少し入れたビールを作ってみようと考えてはいます。
昨年頼まれて作ったことがあって、結構上手く行ったので、それをやってみようかなと。マスコミなどにもウケがいいんじゃないかなーと思いますしね。

地元大子の状況、周りを見ながら、歩調を合わせて。

今後もドイツビールを守りつつ、大子町の状況に合わせていく

−これから考えている取り組みや新しいことがあれば教えていただけますか。

そうですね、まあ、自粛ムードは少しずつ開けてはくると思いますが、すぐにっていうわけでもないと思います。なので、お中元とかお歳暮とかもやっていって、少しでも以前の状況に戻っていけばいいかなと思いますね。

あとはやっぱり、先ほどの地元のお米を使ったビールに今年は取り組んで、少しでも話題を作れるようにしたいなと考えてます。

−地元のお米を使ったビール、楽しみですね。

そうですね、一度作ってみて確かな手応えはあるので、夏には間に合わないかもしれないですけど、今年中には何とか一度作って、広くマスコミや地元茨城、大子の皆さんにアピールできればいいかなと思ってます。

改めて地元の方々のありがたみを知った。

−今回の新型ウイルス感染症の自粛期間から、何か地域との関わり方などで変化はありましたか。

お店は期間中、休みなしで営業していたんで、中でも常連さんとかがよく気を遣って「大丈夫か?」とか声をかけてくださったりして。本当にありがたいなと思いましたね。
こんな状況の中続けていくのには本当に不安でいっぱいなんですが、そんな中でも本当に嬉しかったし、心強いなと思いました。

改めて、本当にそういった言葉に励まされて、がんばって行こうかなって思えました。本当にありがたいですね。

このお店もたった24年ですが、この先40年、50年と続けていけるようなお店にできるように、これからしていければいいなと思います。

伝統的な製法のビールを、茨城県大子町で作るというこだわり。

大子森林物産株式会社 綿引社長にお話を聞いて、伝統的なドイツ式の製法を頑なに守りながら、地域の方々に愛され、また地元茨城県内だけでなく、県外の方々にも大子ブルワリー、大子ビールの名前を広げているのだなと感じました。

広い目で見ればビールと一口に行っても、いろんな作り方をしたビールがある中で、脇目も振らず、王道だけをいく信念の強さに感動ものでした。

茨城県内でも数少ない地ビールを作るブルワリー。今後も地域の方々に支えられ、愛されながら、ずっとそのおいしさを届けて行って欲しいと思いました。

店舗・アクセス

大子ブルワリー / 大子森林物産 株式会社
住所:茨城県久慈郡大子町大字上金沢1653
TEL:0295-72-8888
WEB:http://www.daigobrewery.com/
大子ブルワリー 公式サイト

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