茨城県産食材のイタリアンレストラン 日立市 クチーナノルドイバラキ
美食の街といえば、スペイン・サンセバスチャン。世界でも有数の美食の街。茨城にもその美食の街を目指し立ち上がった人たちがいる。
茨城県は関東平野の北部に位置し肥沃な大地が広がり、山に囲まれ、また東は太平洋をのぞむ。日本全国屈指の食の宝庫とも言えるのが、茨城県だ。
様々な食材が豊富に揃う土地は、あまり類を見ない。この地の利を生かして、美味しいもの、美食から地域活性化を考えているのが今回取材したお店だ。
Cucina NORD IBARAKI(クチーナノルドイバラキ)は、県北部の日立市の常陸多賀エリアにある。
今回はマネージャーの森万里(もりまり)さんと、料理長の佐藤協壱(さとうきょういち)さんにお話を伺った。
茨城愛から始まった、クチーナノルドイバラキ
クチーナノルドイバラキ オーナー陣の一人でもありまして、現場マネージャーをしております、森万里(もりまり)と申します。
会社名は美食の街ひたちです。
ークチーナノルドイバラキ、という店名の意味、由来は?
当店はイタリア料理店ですので、店名もイタリア語です。それぞれの意味は、クチーナがキッチンや台所、ノルドは北、英語だとNorth、そして茨城。
日本語にすると「茨城の北の台所」と言った意味になります。
茨城県は東側は太平洋、西側は緑豊かな山地、川も流れています。野もあり、豊かな大地もあり。この様な環境下で豊富な様々な食材があります。それらをイタリア料理に仕立てています。
「Made in 茨城を世界に」という大きな目標を掲げています。ですので、茨城愛を前面にCucina NORD IBARAKIとしています。
ーお店の営業はどの様なカタチでなさっているのでしょうか。
当店はお昼と夜の営業に分かれております。それぞれ、今現在はコース料理のみのご案内、ご提供とさせて頂いております。
ーお店ができたのはいつ頃でしょうか。
2016年にこのお店を運営する会社、株式会社美食の街ひたちを設立しまして、ノルドの店舗は2017年5月3日にオープンしました。
ーこのお店が始まったきっかけは?
東日本大震災の後、茨城県の県北地域は街の元気がなくなってきて、地域振興どの様にしたら良いのか、と住民みんなが思っていたんです。当時、大きな企業が地域から撤退してなくなってしまったりしたんです。そう言った状況を見ていた、地元で活躍している者たちがなんとか元気になる事はできないかと考えていたんです。その時に日立市出身のシェフ、神保佳永(じんぼよしなが)氏(東京・HATAKE AOYAMA)を中心に、地元の飲食店や旅館の経営者や料理人が集まって、2014年と2015年に期間限定のレストラン「リストランテ ひたち」を開催したんです。
リストランテひたちは2〜3日の期間限定のレストラン。とてもお客様からも好評で評判がよかったんです。
期間限定ではもったいない。恒久的にこの様なお店、料理が楽しめる物はないか。ということになって。次第にそう言ったアツい想いが湧いてきていたんです。
地元の経営者のグループがありまして。リストランテひたちに並行して、形に残って地域の文化の発展にいいものはないか。という話があったんです。
二つの話が融合して、美食の街ひたちという会社を設立して、このノルドを立ち上げるきっかけになったんです。
ーお店を立ち上げるに際して皆さんの思いを詳しく伺えますか。
立ち上げた者達の思いは、社会貢献もできて、文化的に牽引でき、皆さんが集うことができる様なお店がいいねという事。
こういうコンセプトはもちろんですが、とにかく人に優しいものを召し上がっていただくということ。
茨城はとても素晴らしい食材のある地域です。しかしながら、地元の人でもあまりよく知られていない食材などもあります。そういった面で、地元の素晴らしいもの、美味しいものをとにかく地元の皆さんに食べていただきたいという事があります。
ちょっと話は変わりますけど、正しくいうとイタリア料理という料理は無いんです。イタリア料理は郷土料理の集合体で、それらがイタリア料理なんです。
茨城も同じ様に、様々な食材がありますので、それらの集合体で、オール茨城で、レストランで提供していくという事ですね。
また、もう一つ大きなコンセプトとして「人と人とが繋がるレストラン」というのを掲げています。
お客さんと生産者さんなど、ノルドにきて頂いた方が、関わって頂いた方がつながっていく。いろんな意味で繋がっていくレストランになればいいな。というのもコンセプトでもあります。
自慢の料理をオードブルで。新しいテイクアウトメニューも検討。
ー新型ウイルス感染症の拡大によって緊急事態宣言の期間、お店に影響はありましたか。
緊急事態宣言発令の後、4月末〜5月末まで休業をしました。
お店の営業は休業をしても、このお店をなくす訳には行かないですし、また平時に戻った際にはお客様に足を運んでいただきたい、従業員・スタッフの職場を守らなければならない。そんな思い一心でした。
その期間、お店は休業していましたが、以前より好評いただいていたイタリアンオードブルをテイクアウトで提供していました。シェフと私の二人で作って、お客様対応をしてというのを朝から夜までやっていました。
このお店の周りは緑に囲まれていて、様々な花々があるんです。期間中はバラなどの花が本当にきれいに咲いていたんですが、これを見ていただくこともできなかったんです。勿体ないということで、お庭の花は全て無農薬で、エディブルフラワー(食べられるお花)ですので、オードブルに使わせていただきました。
お客様にも大変これも好評で、本当にやってよかったと思います。
現在もオードブルのテイクアウトは対応しております。今後も頑張ってテイクアウトでのご提供をしていきたいと考えています。
ー今後のために、対策として考えられたこと、取り組まれていることは
この状況もいつ収束するのかわからない状況ですよね。飲食店ということで、大打撃でした。正直、今後の先行きも見えない状況であります。
お客様の動きも宴会がなくなりました。結婚式や、そのほかの様々なお祝い事、法事などそういった団体のお客様がなくなってしまったんです。
そんな状況の中でも、このノルドでしか楽しむことができない、美味しいものを食べたいというお客様は変わらず来て頂いているんです。そのお客様は本当にありがたいと思います。
これからの時代に則していくために、テイクアウトの商品を色々と検討しております。
まずはイタリアンオードブルと一緒に召し上がっていただく、パスタソースの開発・検討をしています。
また、スイーツをおうちで召し上がりたいというご要望もありまして。お店で出しているドルチェ(デザート)は残念ながら持ち歩きには適さないんです。ですので、テイクアウトができるものをプロの方に指導を仰ぎながら、現在開発検討を進めています。試作を重ねていまして、いい所まで来ていますので、皆さんにお披露目ができる様になりましたら、その節には皆さんよろしくお願いいたします。
生産者と共に作り上げるオンリーワンのお料理たち
ーお料理についてお話を伺います。自己紹介をお願いします。
クチーナノルドイバラキ料理長をしております、佐藤協壱(さとうきょういち)と申します。
私は幼い頃からお料理作るのが好きで、18、19歳になってすぐに料理の道に行こうと決めて。ホテルやレストランを経験して、イタリアに渡って勉強をしてきました。それから日本に帰ってきてからは、ノルドをプロデュースしてくださっている神保佳永シェフのお店で働かせて頂いていました。その後、ノルドを立ち上げたという感じです。
ー茨城県食材に特化したお店ということですが、食材への想いはどんなものがありますか。
クチーナノルドイバラキは茨城県の食材にこだわったお店ということになっております。全国的に見れば季節によらず通年でお野菜がありますが、茨城に限定してこだわっているので、いつも同じ野菜があるとは限りません。ですので、季節の素材を使ったお料理を提供する様になっています。ですので、今有っても、2ヶ月経つと無い食材などもあるので、1ヶ月半〜2ヶ月おきにメニューの変更をしております。
全て地物。茨城県産のものをお料理にしてご紹介しております。
お野菜ですと、やはり土にこだわりを持って無農薬で生産されている農家さんの中でも、私共で厳選してお野菜を仕入れさせて頂いています。食べて美味しいというだけではなく、健康にも気遣ったものでなければならないと思います。そう言ったお野菜、料理を食べてさらに健康になってもらいたいという想いがありますので、そういったこだわりのお野菜を使っております。
また、茨城県は近くに海があります。県北部には北から流れてくる寒流、南部には暖流と、寒流と暖流がぶつかる地域でもあります。ですので、様々な魚種が水揚げされます。
そう言った特色を活かして、北のもの、南のものを使い分けながらお料理にしています。
茨城県でお肉といえば、常陸牛がとても有名です。常陸牛はもちろんではありますが、当店で最近力を入れているのが「常陸の輝き」という大変美味しい豚肉がございます。常陸の輝きは柔らかくて、香りがよく、尚且つ美味しいお肉です。肉質もサシが入っているようなお肉でして、本当に美味しい豚肉です。当店ではいつも置いていますので、是非ご来店、御賞味いただきたいオススメのお肉です。
ー1〜2ヶ月に一度メニューを変えているということですが、メニューを作る時はどのように考えているのですか
メニューを変更する際には、私が季節の食材を吟味してピックアップします。それを監修して頂いてる神保佳永シェフと共有して、食材の組み合わせや調理の方法、どうしたら驚きのある料理になるか、楽しんでいただけるかなど、様々なポイントでアツく語り合って考えます。その後、オーナー陣にプレゼンをしてさらに改良を加えて、本当に美味しいお料理をお客様に提供するという感じです。
正直、大変な部分はありますが、その分完成度の高いお料理をお客様にご提供できているのかなと思います。
ー食材選びで気を使っていることはありますか
食材を選ぶ時、探すときには直接生産者さんのもとを訪ねて、実際の現場を目で見て肌で感じるということ、また生産者さんとお話をすることを大切にしています。
料理人もこだわりはたくさんありますが、生産者さんも同じようにこだわりを持って生産されているんです。
生産者さんとしても、肥料のあげ方や、土づくり、気候や環境に合わせた生産をされています。できることとできないことがあるけれど、その中でも最高のものを提供したい。ということを仰っていただく農家さんがとても多い。
農家さんに直接会うと、その時期や今後どんなものができるのかや、メニューにできるものは何かというお話も頂いたりします。中にはお店の要望に合わせて、生産に挑戦してみるよと言ってくださる方もいます。農家さんと一緒に商品を共同開発しているような形でノルドのメニューは出来上がっています。
ーこだわりの茨城県産食材から調理するときの想いは
農家産の無農薬というものに通じるところがあるかもしれませんが、当店では化学調味料や余計な調味料を一切使わないようにしています。できる限り塩と胡椒だけのようなシンプルにすることを心がけています。フォンドボーというスープがありますが、骨から焼いて、2,3日間かけてじっくり煮込んで提供しています。ですので自信を持って本当に体にいいものを提供しております。
ちなみに、料理に使うお塩だけでも4種類ほどありまして。。。なので、本当に。こだわってます(笑)
ーでは、今日ご用意いただいたお料理のご紹介をおねがいします。
こちらは常磐沖で上がったヒラメです。中には茨城県産の大葉をペースト状にしたものを巻き込んでソテーしたものです。
ソースはひたちなか市にある黒沢醤油さんの醤油を使ったバターソースを使っています。さらに、十王のかしむらファームさんのトマトをお店でじっくり1〜2日乾燥させたドライトマトをあしらいました。どの食材をとっても本当に美味しく仕上がっていると思います。それぞれ一緒にあつあつのところを召し上がっていただくと、一体感のあるお料理になっておりますので、是非御賞味いただければと思います。
※ご来店の時期によって、メニューが変わりますので詳しくはお問い合わせください。
地域と手をとりあい「茨城の美食の街」を世界に向けて発信していきたい
ー今後の夢や目標を教えてください!
森)夢はたくさんあります。その中でも私共は地域の仲間と県北ガストロノミープロジェクトというものに、参加しております。これは地域活性化、社会貢献の一環として参加しているものです。プロジェクトには県北の様々なジャンルの料理人が参加していまして、地域の食材を用いて地域のことを広く皆さんに知っていただきたいという取り組みです。それぞれが様々な試みをしています。勉強会でもあり。チームでもあり。これからその仲間といろんな企画やイベントをやっていきたいと考えています。
この試みが地域活性化の一助になればいいなと思っています。
また、このノルドのお店の周辺が人が集まるエリアにしていきたいなと。お隣では英語教室があります。今後はこの他にも様々企画、計画していきたいなと考えています。
コンセプトでもある、人と人とが繋がるレストラン、人が集うレストランにしていきたいと考えてます。
さらに一歩踏み込むと、当社は株式会社美食の街ひたちという名前ですので、名実ともにこの街が美食の街になること。常陸多賀駅を降りると、美味しいものがなんでもある、色々と楽しめる。そんなエリアにしていって、文化となり、世界に発信していけるような地域になればなと。地域一丸となって、チームでこの地域を盛り上げていきたいなというのが夢ですね。
佐藤)当初からノルドでは「Made in 茨城を世界へ」というのが、掲げているキャッチコピーの一つです。ですので、茨城、日立。本当に美味しいものがたくさんあります。私たちはそれにほんの少し手を加えてご提供させて頂いてます。これを地元の生産者さんと共に発信していく。
また、当店だけではなく、県北ガストロノミープロジェクトのメンバーや他店舗の皆さんと一緒に輪になっていければと思っています。
現在の取り組みとして、それぞれのお店ごとにいわゆる「秘伝のタレ」みたいな本当に美味しいものがありますよね。それを折角ならばみんなで手の内を明かして、共有しちゃおうよ、と。もしかしたら、本当に美味しいものを共有すれば、さらに美味しくなってかえってくるかもしれないですよね。一体となってそう言ったことをやっていく。
そうすればきっと「茨城・日立にきてよかった、美味しいものがいっぱいだった」と言ってもらえるようなお店になることを目指してやっております。
今は少しずつではありますが、他店舗と協力しながら、世界に向けてサンセバスチャンのような美食の街になるように、日々努力しているところです。なので、是非皆さん来てくださいね!!
神保佳永シェフ メッセージ
Cucina NORD IBARAKI の総合プロデュースをしております、神保佳永です。
私はノルドのプロデューサーとして、メニュー、食材はもちろん、立ち上げの時にはお店の雰囲気や食器、カトラリーに至るまで監修をさせて頂いております。
自分自身茨城県日立市の出身で、現在は東京でレストランをやっていますが、東京から見ても本当に地元日立、県北地域にはいい食材がたくさんあるんです。以前から地産地消ということにも興味があって、ノルドのお話を頂いて、是非ということで一緒にやっています。
ノルドのコンセプトは「人と人とが繋がるレストラン」ということ。ノルドができたことによっていろんな人が繋がって、ご縁が広がっていっています。開店から3年が経ち、少しずつですがノルドから県北の美味しいものを広く知っていただけるようになってきているなと実感しています。
監修という立場ではありますが、今後またさらに、茨城県北だけでなく、県全域、また東京、日本全国、さらには全世界に発信できるようなレストランにしていければと思っています。機会がありましたら是非ノルドに足を運んでいただけたら幸いです。
店舗・アクセス
Cucina NORD IBARAKI / 株式会社美食の街ひたち
住所:茨城県日立市末広町2丁目1番32号
TEL:0294-32-0369
WEB:http://www.nord-ibaraki.jp/