茨城県の食材、地酒を堪能できる居酒屋ダイニング 水戸/つくば 酒趣
茨城県は食に恵まれ、魅力ある農作物や海産物が採れる地域。種類別の農産物は、日本全国でもトップクラスに入る産出量のものがいくつもある。
関東一の農業県である茨城の魅力を地元の人に伝え、広めたい。そんな思いに溢れたお店が水戸、つくばにある。
今回お話を伺ったのはそんな茨城への想いを持つ、有限会社いばらき食文化研究会の代表 井坂紀元(いさかのりもと)さんだ。
茨城のウマいモノが詰まった居酒屋 酒趣〜Syusyu〜
ー自己紹介をお願いします。
有限会社いばらき食文化研究会 代表の井坂紀元(いさかのりもと)と申します。
水戸とつくばで酒趣(しゅしゅ)というお店をやっています。
ーいつ頃からお店を始められたんでしょうか
2002年に創業して、今年で18年になります。当時は茨城の美味しいものを発信して行くお店があんまりなくて、「地産地消」って言葉もない様な時代でした。ですので茨城の県庁所在地の水戸で、お店を立ち上げさせていただきました。
元々出身は東海村でして、就職したのは東京。最初は食品原料の商社に入社しました。そこではメーカーさん120社くらいを担当して、商品開発をやったりしてました。例えば、製粉会社さんだったら、あちこちのスーパーから唐揚げを買ってきて、どれが美味しいかとか、どうやったらこの食感になるのか、とか。そういった感じで商品開発をしました。
その後、マーケティング会社に転職した後も、食品会社を担当してました。そんな感じで関わり方はいろいろですが、食に関わってきたんですよね。
私が地元に戻ってきた頃に気づいたのは、茨城はたくさん美味しいものがあって、酒蔵もたくさんあるということですね。その頃は地元のものを提供するお店がなかったんです。それで2002年にお店を水戸に立ち上げました。そこからお肉も野菜もお魚も。またお酒も、茨城の美味しいものを使ってお料理を提供するお店として、頑張ってきて、18年になります。
ー他にも井坂さんは色々と活動をされてますよね。
そうですね、あとは水戸市のとなりのひたちなか市で毎年夏に開催される音楽フェス、ロックインジャパンというフェスがありますよね。そこに2007年から出店しています。
ロックインジャパンで茨城のものをPRすれば、全国に茨城の美味しいものを広めることができるんじゃないかということで。茨城はメロンの生産高日本一ということでメロンソーダを販売しています。今ではフェスの名物と言っていただけるほどになりました。
ー茨城県の品物にこだわる理由は何があるんでしょう。
私の友達で農家や漁師をしている人がいるんですけど「やっぱり農家じゃ食っていけない」とか、「漁師は大変な仕事だから、子供には継がせない」とか言ってるんですよね。
そういうことを聞いて、もっと農家さんや漁師さんが儲かる様にしたいというか。せっかくのお野菜やお魚を地域の人がもっと愛して大事に食べるということが、重要なことなんではないかと思ったんですね。やはりそう言ったことも、知る機会があるお店というのを作りたかったんです。
一方で、街にチェーン店が増えていわゆる料理人がいらない様なお店が増えてて、そんな文化に寂しさを感じていたんですね。きちんとした料理を作ることとか料理人の技術とか文化を受け継いでいくことも必要だと思ったんです。
うちのお店では創業以来手作りでお料理を出しています。茨城のものを使って、PRしながら、そう言った取り組みも行っています。
ちなみに、つくばのお店では、手打ちそばも提供していまして。常陸太田の方で、焼畑農法で自分たちで作ってます。そのそばを石臼で挽いて、お蕎麦にして提供しています。
茨城の美味しいを詰めた、おうちで楽しめるお料理をテイクアウト。
ー新型ウイルス感染症のことでお店としての対応はどの様にされましたか。
水戸も、つくばもどちらのお店も4月に入ってすぐ、休業にしました。
世の中は外出自粛ですし、夜間は尚更。ということで、自分たち飲食店ができることって何か、飲食店の存在意義って何か、ということを改めてスタッフとみんなで考えたんです。
お客様がお店に足を運んでくださる理由は色々で、接客やお店の雰囲気を楽しみたいというのはもちろんの事だと思います。でも一番に求められているのは「料理」という部分なのかなと。
お店で食べる料理って、おうちで作れない、食べられない料理だからこそ、お店に足を運んで食べていただく。それが飲食店の存在意義の大きな1つなのかな。
外出を控えなければいけない、外食も呑みにも行けない状況の中でも、少しでもご自宅で居酒屋気分になっていただけたらいいのではないか。ということを考えて、お店で作っているお料理を重箱に詰めて販売したんです。おうちで楽しんでもらいたいという想いから「おうちで酒趣」というネーミングにしました。
ーおうちで酒趣さんのお料理が楽しめるのはいいですね。お客さんの反応はいかがでしたか?
お客さんの反応はすごく良かったんです。
他のお店もテイクアウトでいろんなものがある中で、他店さんのを試して比べて、結局うちのを注文してくれたりとか、毎週注文をくださる方が居たりとか。自分たちの予想以上の反応で、本当にありがたい、という気持ちでした。反面、普段のお料理の提供スタイルとテイクアウトは作り方が違うので、大変だなと思うこともありましたね。
ですので、いつも以上に安全に召し上がっていただくことに、細心の注意を払って作っていました。お客さんが持ち帰って召し上がる状況とかがお店でのスタイルとは違うのでかなり気を使いました。
ーお店の営業再開をされたのはいつ頃でしたか
6月9日から営業を再開しました。というのも、ずっとロックインジャパンに出店していて、どうせならロックの日、6月9日にと思って(笑)
ー営業再開するにあたって、取り組まれたこと、対策していることはありますか
気持ちの面では前をむいて進んでいくしかないですよね。
お店では、飛沫防止のビニルシートを張ったり、アルコール消毒できる様に準備をしています。いらっしゃるお客様同士がなるべく接触がない様な工夫、対策をしています。
お客様が安心して楽しんでいただける様な空間づくり、ということを第一に考えてます。
お料理については、これまで通り、茨城にこだわったお料理を提供することを変わらず取り組んでいきたいと考えています。
夏フェスで話題の「メロンまるごとクリームソーダ」は酒趣の名物!
ーお店のオススメはありますか。
オススメというと、正直困っちゃうんですが(笑)どれも、茨城県内のこだわりの生産者さんをたずねて、素材を集めて料理を提供しているので、どれもオススメというのが本音なんですよね。
ーそうですよね。夏フェスの名物となってるクリームソーダが人気なんですよね。
前述の通り、メロンのクリームソーダはロックインジャパンで出した商品です。
メロンの生産量が日本一の茨城県なんですが、あまり知られていないということで。若い方たちが集まるロックインジャパンで、茨城のものをアピールしたいと考えてこのクリームソーダを作って販売し始めたのが始まりなんです。
ただメロンをカットして売るだけでは「美味しい」というだけで終わりですよね。商品が記憶に残らないと思うんです。記憶に残って美味しく食べてもらうために、メロンを丸ごと一個使ったメロンソーダを作ったら、これならいけるってことで。
ーメロンを丸ごと使う発想はすごいですね。販売に至るまでに苦労したこととかありますか。
販売するためのメロンを集めようとなった時に、県内のメロン農家さんを訪ねていくと、軒並み断られてしまって。「うちのメロンはそんなふうにするために作ってるんじゃない」とか言われて。メロンを冷凍して提供するので、そこに理解を得られず、大変でした。
断れ続けて途方に暮れながらも、根気強く交渉を続けていく中で、県西の八千代町にあるメロンの出荷組合さんの方と話をしたら「面白いんじゃない?それでメロンの新しい需要ができればそれは良い事だから協力するよ」と言っていただいて、一年目は2000個のメロンを確保できたんです。
ー2000個ですか!売れ行きはどうでしたか?
おかげさまで大行列を作りまして。初めての年だったので、提供までのスピードが遅かったのもありましたけど、なんとか完売することができました。
その時にフェスの担当者さんから「1年目からこんなに大行列になるのは珍しい。数年後にはこのフェスの名物になるよ!」と言われて。その言葉を信じて毎年やってきて、今ではおかげさまでロックインジャパンに行って、メロンまるごとクリームソーダを食べないとモグリだって言われるほどにまでなりました。
ー初めての年はトータルで2000個、最近はどのくらい売れるんですか?
初年度は3日間で2000個でした。今は、提供スピードを上げるために色々と改善をした結果、お会計からお渡しまで平均8秒にまでなりまして。でもピーク時には500人くらい並んじゃうんです。
そんなこんなで、最近では1日に3000個ほど売れる様になりました。
ーそもそもな話になってしまいますけど、なぜメロンソーダにしようと思ったんでしょうか。
茨城県は生産高一位のものって色々ありますよね。フェスという場所ならばスイーツとかくだものが良いかなと思って。メロンに行き着いたんです。
メロンに決めてから、メロンの加工品は何があるか考えると、メロンパンとか色々ありますよね。考えていくうちにクリームソーダ、メロンソーダが出てきて。
でも、メロンソーダはメロン全く入ってないんですよね。これって本物のメロンを使って作ったらリアルな本物のメロンソーダになるんじゃないかと思ったのがきっかけですね。
インスタ映えとかって言葉が今はありますけど、当時はスマホがありませんでしたから。お客さんがデジカメで写真を撮ってくれるかなとか。あとはメロンを丸ごと持って会場内を歩いてくれたら、そのメロン自体が話題になって、宣伝になるんじゃないかということも考えたんですよ。
まるごとメロンを食べられる贅沢さって、日本一の茨城県だからこそできることじゃないかなって。
ー今年はフェスが中止ですが、メロンまるごとクリームソーダを食べたいという場合はどこで食べられますか。
当店に来て頂ければ、通年ご用意しています。水戸本店でも、つくば店でもどちらでも召し上がっていただけます。
僕としてはフェスの暑い炎天下の中で、召し上がっていただきたいですが、今年は中止ということですので、是非お店に御来店頂ければと思います。
毎年、会場で食べられなかったという方が、お店にご来店いただいてたりもしますし。お店でお待ちしております。
ーどうしても水戸、つくばが遠い。でも今年も食べたい!という方はどうしたら良いでしょうか。
今、クラウドファンディングに取り組んでいます。
今年はフェスや他にもフードイベントが中止になってしまったこともあって、メロンまるごとクリームソーダのために用意して、加工したメロンが冷凍庫に約18000個保管されてるんです。
そのメロンはこのままだと経営的にもお金が回っていかないので、少しでもお金に変えていくために、クラウドファンディングを立ち上げました。フェスやイベントで仲良くさせて頂いていた北茨城の五浦ハムさんと一緒に共同でクラウドファンディングに挑戦しているところです。
クラウドファンディングでご支援頂いた方には、今年ロックインジャパンの開催予定だった日時までにリターン商品をお届けする様に考えております。
あとは、東京の銀座にある茨城県のアンテナショップ「茨城センス」に7月と8月の土日限定で提供をしています。ですので、東京近郊の方は是非そちらでも召し上がっていただけます。
メイドイン茨城を自らの手で、より深めていきたい
ー井坂さんのこれからの夢や目標はありますか。
やりたいことはやっぱり色々ありますね。
その中でも一番は農業をやってみたいなって最近思う様になって。今、始めるための準備をしているところです。
ものづくりっていう面ですごく面白いな、やってみたいなと。こだわりの農家さんを回っていて、いろんな考えを持った農家さんが居て、本当に素敵だなと思って。
ようやく今回の新型ウイルスの騒ぎがあって、考える時間をもらって、これから絶対に取り組みたいなと思ってます。
もちろんお店としても、イベントとか忙しくさせて頂いてますけど。これからも成長していって、水戸とつくばにお店がありますけど、ゆくゆくはもう1店舗、茨城の美味しいものを発信する拠点を持つことができたら良いなと思ってます。
これからの時代はネットでの情報発信ってのも、大事ではありますよね。でも、ネットだけでは伝わらないものがありますよね。
実際にお店に来て頂いて、お料理の味や香り、見た目、温かみを感じて頂ける。そんなお店にこれからもできる様にしていきたいですね。
クリームソーダから全国に茨城をアピールしていく
井坂さんにお話を伺ってみて、本当に茨城のことを真剣に考えているということをひしひしと感じました。
メロンまるごとクリームソーダを頂いたが、凍っているメロンにソーダとアイスクリームという、一見シンプルでもインパクトもあって、楽しい商品になっているなと思った。
店内も入り口から、トンネルの様な席の作りなど、すごく雰囲気のいい店内はゆっくりとくつろぎながら、家族や仲間同士とのお話も弾むこと間違いなしですよ!
また、雑談をしている中で、つくばでチョウザメの養殖をしている方と協力して、新しい地域の名物作りにも取り組まれていると聞いて、これからの新たな展開が楽しみなインタビューでした。
店舗・アクセス
和伊和伊ダイニング 酒趣本店〜Syusyu〜
住所:茨城県水戸市城南町1-5-16
TEL:029-302-1103
慈久庵つくば壮 酒趣 〜Syusyu〜
住所:茨城県つくば市研究学園5-13-11 MYU-MYUビル203
TEL:029-875-7373