昔ながらの手作りコロッケで街おこし。茨城県龍ケ崎市 髙橋肉店
茨城県龍ケ崎市は茨城県の南部に位置し、千葉県境にも程近い場所にある。かつては常磐線佐貫駅と言われていたが、今年2020年3月に常磐線龍ケ崎市駅となった。
龍ケ崎市駅から車で10分ほどのところにあるのが、今回取材した有限会社髙橋肉店さんだ。
お話を伺ったのは、代表取締役 飯島進(いいじますすむ)さんと、店長の飯島美知(いいじまみち)さん。
初代のお祖父さんから三代続く街のお肉屋さん
ー会社やお店の自己紹介をお願いします。
進さん)はい、有限会社髙橋肉店の代表をしております、飯島進(いいじますすむ)と申します。よろしくお願いします。
美知さん)私は店長をしています、飯島美知です。ミッチーって呼んでください(笑)(以下、敬称を略して表記いたします。)
ーお店の歴史とか、これまでの来歴などを伺えますか?
進)初代のお祖父ちゃんから始まって、私で三代目になります。街の小さなお肉屋さんとして始まった、と聞いています。
美知)この髙橋肉店は自分が生まれた家なんですけど。お祖父ちゃんは元々農家の長男だったんですね。で、おじいちゃんの母方のおじさんが、当時、東京の京橋でお肉屋さんをやっていて。そこにお祖父ちゃんが修行というか、手伝いに行っていたんですよ。今はその東京のお肉屋さんはもうないんですけど。
おじいちゃんはそのお肉屋さんの仕事が楽しかったらしくて、それでお肉屋さんを龍ケ崎の地でやろうということで帰ってきたんです。
その時、東京での遊び仲間の「あさくらさん」っておじさんを連れてきてて、一緒にやってたんですよ。お店を始めた頃は、龍ケ崎は初めての場所で、周りに何軒も肉屋さんがたくさんあって。
始めたばかりのお店だったので、豚屋さんに行って豚を分けてもらうのに、全然割当が無くて買えないことが多かったんです。
でも、そのあさくらさんっておじさんは、マメで気の利く器用な方だったらしく、豚屋さんのお手伝いをちょこっとしていたんです。そうしたら、豚屋さんの奥さんが口を利いてくれて、豚を買えるようになった、って話を聞いたことがあります。
私の旧姓が望月で、創業した当初は望月肉店って名前でやっていたんですが、お祖父さんが修行したお肉屋さんが「髙橋肉店」って名前だったので、その名前を引き継いで2年目ごろから髙橋肉店でお店をやっていたみたいです。
ー望月さんなのに髙橋肉店とはややこしいですね(笑)
美知)そうなんですよー。髙橋なんだか、望月なんだか、結婚して飯島になって、ややこしいねって言われます(笑)
で、元々は髙橋ってのがはしごだか(=髙)だったんですが、二代目の私の父の代でなべぶたの方(高)になってしまって。
でも、主人がそういうところにも気づいてくれて、はしごだかの方が登っていく様なイメージもできるし、縁起もいい感じもしますし。戻そうよってことではしごだかに登記とかも直したんですね。
それで新しいお店のロゴも作ったりして、いい感じになってきたなーって思います。
ーお二人でお店に入るきっかけってどんなことがあったんでしょうか?
美知)私は自分のやりたかった、保育士の仕事をしていた頃は、自分の家のお店が開店前に出かけて、閉店後に家に帰ってくるような生活でバリバリ働いてたんです。あんまりお店の仕事のことはわからなかったですし、なんとかやってるんだろうな。ってくらいの認識だったんですね。
兄弟で兄が居るんで、きっとお兄ちゃんが継いでくれるんだろう、っていう軽い感じだったんです。でもお兄ちゃんはその気はない感じで、父も自分の代で店をたたむ、という話をしていて。
ふとそんな時に振り返ってみたら、子供の頃から、家族も、お店に働きに来てくれた人たちも、お客さんも自分を可愛がってくれて、色々お喋りしたり、お手伝いをしたり。お肉屋さんなんでメンチカツとか粘土遊びしているような感覚で、お腹が減ったらお惣菜つまみ食いしたりして、楽しくて、さらに美味しい思い出が沢山あるなって思ったんですね。
私、このお店、好きなんだな、なんとか残せないかな。って思ったんです。
主人はその時、車関係の仕事をしていたんですけど、どうにかお店を残す方法はないかなって相談をしたんですね。じゃあ一緒にやろう!って言ってくれて。
主人のお母さんに話したら、涙流しながら驚かれて、私失敗したかな、って思ったりもしたんですけど。主人は言ったらきちっとやる人で、そういうところはすごいなと尊敬していますね。
ー進さんはその時どのような思いだったんでしょうか?
進)髙橋肉店のお肉を食べるまでは、正直お肉なんてどれも一緒だろうって思ってたんです。でも、一口食べたら、今まで食べていたのが何だったのか、と思うくらい、美味しかったんです。
美味しいお肉があれば、何とかやっていけるだろうと思ったんですね。自分は本当に美味しいお肉だし、これなら大丈夫だと思って、二代目のお義父さんに、もし良ければやらせてほしい。って話をして。
それと当時、周りに大きなお店ができたりして、商店街が寂しくなってきていたんです。そんな状況もあって、少しでもお店を続けて街を元気にしたいっていう思いもあったんですよ。
そんなこんなで、お店を手伝い始めて、お肉屋さんの面白さを知って、今に到ります。
街おこしってことで龍ケ崎市はコロッケで地域を元気にしよう、ということで商工会の女性部の方々が活動をされていたんです。自分も当時参加して、今では龍ケ崎コロッケ倶楽部の会長をさせていただいております。
お客さんの「欲しい」にかなうものを出していった自粛営業期間
ー新型ウイルス感染症の感染拡大がありましたが、お店にはどんな影響がありましたか。
美知)営業の面では、テイクアウトなので、一応は問題なかったです。でも、日毎にお客さんの波があって、不安はありましたね。
あとは、お弁当もうちは請け負っていたんです。特に大きかったのは、テレビ撮影とかのお弁当の注文があって。50個とか、200個とか。全部キャンセルになってしまって…そういうのが大きかったですね…。
イベントとかも色々予定があったんだけど、それも中止でダメになっちゃったんだよね。
進)そうだね。
3月に常磐線佐貫駅が龍ケ崎市駅に名前が変わったんです。元々はお祝いするセレモニーが予定されてたんですが、中止になってしまったんですね。他にもここの商店街で毎月開催してる「まいんバザール」、駅前でのコロッケを売るイベントとか、桜祭りとか、色々とイベントが中止になってしまったんです。
いくつかのイベントの時は、開催されることを想定してコロッケをたくさん準備していたんですが、直前で中止が決まって売ることができなかったりしたんです。
コロッケを作って、たくさんの方に来て食べてもらうことで街おこしをしてきたので、それができなくなってしまった。地域としてもコロッケで活気がでて、元気になっていたので、本当に残念な気持ちですね。。
ー自粛期間中のお店の対応はどんなことをされていましたか。
美知)先に話した通り、テイクアウト中心だったんで営業は問題なかったです。その中でも、営業時間を夕方5時までに短縮して営業していました。夜間出歩かないようにっていう感じだったんで。
外食ができなくなって、飲食店さんに比べたら、私たちはそんなでもなかったのかなと。。外食ができないとなると、おうちでご飯を食べる方が多くなって、すぐ食べられるものとか、お持ち帰りできるものに力を入れましたね。お惣菜とかですよね。中でも特に保存が効くような、冷凍の唐揚げとかハンバーグとか。
あとおうちでちょっと贅沢したいって方も多くなって、美味しいステーキのお肉ありますかー?っていらっしゃるお客さんも多かったんです。なので、そう言った商品もきらさない様に、冷凍でラインナップする様にしていました。
あるお客さんは、買って帰って何日か経って、この前のお肉美味しかったよ!またほしいんだけどあるかな?とかって言ってリピートで来てくれたりとかして(笑)
ーなるほど、思いがけない良いこともあったんですね。先ほどイベントの話もありましたが、お店以外での面ではどんなことがありましたか。
進)2月ごろからコロナウイルスのことで騒ぎが始まって、3月になったら学校が休校になってしまいましたよね。学校給食に納入があったので、それが一気にキャンセルになってしまったんですね。
外出自粛要請ってことで、お客さんも外に出られないですし、お店としても感染予防、対策を考えなければなと。。妻も言いましたけど、お客さんの来店回数を減らす意味でも、商品を冷凍で提供したり、通常よりも小分けにして使いやすくしたり。工夫をしながら商品を提供できる様にしています。
あとは、ネットでの販売に力を入れて、少し対策をしているところです。
ーなるほど。店頭で冷凍販売している商品はどんなものがありますか。
進)シュウマイとか、ハンバーグとか、レンジアップするだけで食べられる様なものが中心ですね。コロッケが自慢なんですが、やっぱりコロッケは揚げるのが難しいですよね。揚げる前の状態での冷凍販売はしていますけど、是非お店に来て揚げたてのサクサクの状態を召し上がっていただきたいですね。
龍ケ崎市 街おこしのシンボルと、お店で多くの人に愛される味
ー髙橋肉店のオススメを教えてください。まずは進さんはやっぱり・・・?
進)はい、髙橋肉店のオススメとして、コロッケがあります。元々は髙橋のコロッケという名前でしたが、今はばあちゃんコロッケとして販売しています。
オススメの理由としては、やっぱり龍ケ崎はコロッケの街ってことがあります。また、昔ながらのお肉屋さんのコロッケを今も変わらずに作っているということですね。
このコロッケはばあちゃんコロッケという名前の通り、初代のばあちゃんに作り方を聞いて、作り続けているコロッケなんですね。ばあちゃんは、毎日食べても飽きない様な味に、同じ様に仕上げなさいね。一個食べた後にもう一個食べたい、と思えるように作るんだよ。と教えてくれたんですね。
今も、ばあちゃんに教わった通り、芋を蒸して、お肉を炒めて作っています。でも教わった通りにやっても、毎日同じようにはできないんですね。
少しでもばあちゃんの味に近づけるように、毎日作り続けているコロッケですね。
ーコロッケは1日でどのくらいの数を作っているんですか?
進)通常ですと、お店で1日200〜300個くらいを毎日手作りしていますね。
イベントの準備があったりして、多い時だと500個とか、1000個とかという量を作って販売しています。
ーすごい!結構な数ですね。美知さんのオススメの商品は何でしょうか。
美知)はい、私は豚肉の味噌漬けを推します!
髙橋肉店の味噌漬けは、茨城県産 瑞穂のいも豚を使った味噌漬けです。美味しいお芋を食べて育った豚さんのお肉ですね。一般的に豚肉の味噌漬けというと、厚切りのお肉を漬けるんですが、髙橋肉店では薄めのお肉を漬けています。なので調理するのも楽で、サッと焼いて焼肉にして食べるんです。キャベツとかピーマン、ナスなどの野菜と一緒に炒めても美味しいし、お肉で野菜を巻いても良いですね。
味のポイントは、やっぱりお味噌ですね。うちのオリジナルで、お味噌屋さんと提携して、安定した味に仕上がるようにしています。
元はこの味噌漬けってまかないだったんです。お店で売れずに残っちゃったお肉をお味噌につけて置いて、ご飯と一緒に食べるみたいな。このお肉が美味しくて、お店に出してみようってことになったんですね。最初はあんまり売れなかったから、試食を出しながら頑張って、売ってたんだよという話を聞いてます。
今ではその美味しさが広がって、リピートしてくるお客さんも多くいて。贈答品としても喜ばれているんですよ。
ーコロッケは揚げたてが一番だと思います。でも豚肉の味噌漬けは地方発送とかしてもらえますか?
美知)はい、できます。真空パックの冷凍状態で美味しいままをお届けします!
進)ネットショップがあるので、そちらでご注文いただければ、すぐに手配して発送いたしますので、是非ご利用いただければと思います。
クラウドファンディングが成功。これからも龍ケ崎コロッケで元気に
ーこれからの夢とか目標はありますか?
進)そうですね、やっぱり先ほども言った様に、龍ケ崎市は2000年からコロッケで街おこしをしてきたんです。
でもこのコロナ騒ぎでお客さんが来ない。コロッケを作りたくても、売りたくても、どうすることもできない状況になってしまったんです。コロッケ倶楽部のメンバーとも話をして、何かできることはないかと話合ったんです。
みんなの意見は、コロッケを作って食べてもらいたい。コロッケで行列する様な楽しいことがしたい。コロッケ作らないと元気が出ない!という様な話だったんです。
自分自身、ネットやテレビなどを見て調べていて、クラウドファンディングで資金集めができる、ということを知ったんですね。当初は全くどんな物かわからなかったんですが、様々な事例を見て勉強をしていって、龍ケ崎コロッケを使ってクラウドファンディングでできることは何かと考えたんです。
やっぱり、コロッケを食べてもらうことが一番だよね、ということで、一生龍ケ崎のコロッケを食べられるチケットを100人限定で作って出そう。ということになりました。
5月6日コロッケの日からスタートしたんですが、たくさんの方に応援のコメントやご支援をいただいて、本当にありがたい気持ちと、これから頑張って行かなければいけないなという気持ちです。
これからもずっとこのコロッケの街が続く様に、健康にも気をつけながら、楽しいお店作り、まちづくりができる様に頑張っていきたいなと、思います。
(注:龍ケ崎のコロッケのクラウドファンディングは、2020年6月30日で終了しました。目標額を上回り150%でサクセスされました。)
お二人のオモイが龍ケ崎コロッケを通して広がっていく
飯島ご夫妻とお話をしていて感じたのは、とても笑顔が多く、笑いの絶えないということ。
いつも笑っている人には明るい人が集まってきて、良い流れがあると思うんです。それが、この髙橋肉店さんにはあるのかなというふうに感じました。
クラウドファンディングもサクセスされて、龍ケ崎コロッケでの街おこしが、さらに新たなステージに上がっていくのだなと思うと、これからの龍ケ崎コロッケの動向が楽しみになりました。
お二人だけでなく、地域や周りの方達と一緒に、一丸となって考える。コロッケで美味しく楽しい龍ケ崎がずっと続いて、広がっていくことを願います。
店舗・アクセス
有限会社髙橋肉店
住所:茨城県龍ケ崎市5131
TEL:0297-62-2024
WEB:https://www.nikutaka.com/